予防接種について その2

 まずはじめに前回のエントリの修正から。定期の予防接種として実施されているインフルエンザ予防接種は、1)六十五歳以上の者 と 2)六十歳以上六十五歳未満の者であつて、心臓、じん臓若しくは呼吸器の機能又はヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能に障害を有するものとして厚生労働省令で定めるもの、の2つのグループに属する方に対して行われています。2番目の条件を記載し忘れておりました。失礼しました。

 では、今回は定期予防接種と任意予防接種の違いについて触れます。

定期と任意の違い

 まず名前が違う、定期と任意の予防接種で異なるのは主に「制度上のお金」です。お金というとあまり聞こえは良くないかもしれませんが
1)ワクチンを接種する際にかかる費用
2)(無視したいけれど)無視できない副反応による補償
の上記2つが大きく異なります。さて、実際はどうなっているのでしょうか。

1)ワクチンを接種する際にかかる費用

 予防接種法の定期(勧奨)接種に定められているワクチンは、前回の記載の通り一定の期間内であればほとんどの場合無料で接種することができます。一定の期間であれば、という条件がついているところがネックですが、この条件をクリアすればワクチン接種を、費用負担なく受けることができます。
 対して任意接種では、全てのワクチンが原則全額自費となります。例えばHibワクチンでは、標準で生後2ヶ月以上7ヶ月未満で接種を開始し、4〜8週の間隔をあけて3回接種します。さらに3回目から約1年後にもう一度接種、の最大で計4回を行うことになります*1が、一回あたりおよそ6,000円〜7,000円(医療機関で差があります)なので全部で約30,000円かかります。この金額を高いとみるか、安いとみるかは意見の分かれるところかなとは思います。Hibワクチンの場合は免疫獲得率は良好である*2ので、病気になるのを防ぐことから考えれば決して高すぎる!値段ではないとも言えますが、必要な人が必要な時に接種できるように、できるだけ予防接種の敷居は下げたい。やはり少しでも公的な援助が欲しいところです。かかる費用分のお金を、何か別の面からお子さんのために使う余裕もできますしね。

2)(無視したいけれど)無視できない副反応による補償

 病気の予防や症状の軽減に有効であるワクチンも、種類によって頻度や症状は異なりますが、接種することで局所的・全身的な副反応(副作用)がみられることがあります。多くは注射をしたところが赤くなって腫れたり、微熱がでたり、機嫌が悪くなったり、というような軽い症状が何日かみられたあと、問題なく軽快します。ごくまれに重症化することがあり、その場合は症状がおさまった後になんらかの障害が残ることがあります。このように予防接種が原因で、医療を必要とする状況になってしまったり、不幸にも亡くなられてしまったりした場合のために健康被害救済としての補償制度がありますが、定期接種と任意接種で補償内容が異なります。




 上が定期接種での補償、下が任意接種での補償です。どちらも医療費・医療手当までは同じ補償内容です。しかし、健康被害の程度が重くなるほど、内容に差が出てしまいます。例えば18歳未満の方で何らかの障害が残ってしまった場合(かつ、それがワクチン接種によるものだと認定された場合)、定期・任意ともに障害児養育年金が支給されます。1級か2級かの判定基準は定期と任意でほぼ同等であるのですが、にも関わらず得られる補償は約半分になっています(まぁ判定基準が厳密に同じでない時点で、すでにおかしい気がします)。
 
 昨今新型インフルエンザワクチンについて盛んに情報が出てきていますが、ワクチンが確保できるのかとか、その有効性はどうだとか、情報公開が十分でないとか以前に、予防接種を推奨する環境がしっかり整っているかといえば、実際は厳しいです。そして、ワクチン問題はインフルエンザに限ったことではありません。この問題をとりあげてらっしゃる行政に近い方もいるようですので、インフルのみならず他のワクチンを接種するかどうか迷っている人や、こどもに接種する、と決めたお父さんお母さん方が少しでも安心できるように、国にはインフル対策と同時に、制度の見直しもぜひ行って頂きたいところです。

おまけ