看護師と保健師と4年制大学のお話

※おことわり
 以下の分はTemperの独断と偏見に満ちた文章です。読む方の気分を害する可能性が大いにあります。ご了承下さい。
 アンダーラインをみつどんさんにささげます。

看護大学と保健師

 保健師のまとめブログ2さんの6月20日日記

看護大学、保健師教育必修を除外へ

看護行政・保健師情報

大学教育における助産師教育と保健師教育の違いは、助産師が選択制なのに対し、保健師は必修であること。
大学教育を掌る文科省の考えとして「大学教育なのに看護だけなら専門学校と変わらない。保健師の視点、地域を見る目も必要」
というものがあったため、必修化されていました。

http://d.hatena.ne.jp/hokenshi/20090620/1245688006

 自分の出身大学もそうですが、4年のうち3年を教養科目と看護の専門科目に、残り1年を保健師の単位と卒業研究で半分ずつ、というようなカリキュラムが組まれていました(単位の割合とかはうろおぼえですすいませんすいません)。今のところ日本で看護大学というと、全部がこの「卒業と同時に看護師と保健師の国家試験受験資格を得ることができる」仕組みです(例外として国立看護大学校で4年制の看護のみ+助産師選択がありますが、厳密には「大学」でないのでちょっと脇に置いておきます)。
 ですので、日本で看護師の資格が欲しい場合は、看護専門学校で3年間学ぶか、大学で看護プラスアルファ保健師の勉強を4年間するか、という2択になっています。
 ちなみに、うちの大学は夏休み返上で授業を受けることで助産過程も履修可でしたが、自分の在学中に大学院へと変更されていました。

ただ、「保健師に興味がない」という学生も保健師実習が必要であり、雨後の竹の子のように看護大学が増えてしまった現在では

* 学生→興味がないのに実習
* 現場→興味がない学生を含む大量の学生の受け入れ

という状況。

 大学に保健師過程もあると分かっていて受験したのだとは思いますが、留年した私がみたどの学年にも「別に保健師いらないんだよね」てな意見をお持ちの方が数名から見受けられました。保健師単位分の、地域看護学なんていう授業を欠席する頻度が増えたり、実習中の態度がまずかったり…といったことも実際あったようです。実習受け入れ先にとっても、学生にとっても利どころか害しか一致してない状況は、確かにいただけません。

というわけで、看護協会や厚労省看護課、現場は(各の組織でいろいろ思惑もありますが)、「保健師教育も助産師教育と同じ選択制」を訴え続けてきました。

そんな訴えていた場所の一つである文科省の「大学における看護系人材養成の在り方に関する検討会」で、こんな素案がまとめられています。

保健師実習、必修除外へ 看護系大学の教育内容見直し 47NEWS(2009.6.20)

 看護系大学の教育内容を検討している文部科学省の専門家会議は20日までに、学生の急増や医学の高度化に伴い、教育の質が保てない恐れがあるとして、卒業の要件から
保健師の履修課目を外すことを柱とする報告書素案をまとめた。近く中間報告を提出する。
 保健師と看護師の免許取得に必要な教育内容を統合したカリキュラムを全大学が取り入れているが、保健師教育については選択制や大学院での履修などで看護師教育の充実に力を入れる。
教育体制や実習先が整った大学は保健師教育を必修のままにできるとし大学側の裁量を認める。早ければ2013年度以降、導入の見通しだ。
 1991年度に11校だった看護系学部・学科がある大学は、看護師不足を背景に急増し09年度は178校。定員は91年度の558人から09年度が1万4192人と約25倍にもなった。
 学生の急増で、看護実習先となる病院は確保できても、保健所を中心とした保健師実習の受け入れ先が不足していた。

 有識者によると、"学生の急増や医学の高度化に伴い、教育の質が保てない恐れがある"という理由から、保健師の課目を外す=実質看護(専門)大学創設を検討する必要がある、との結論に至ったようであります。うーんそうねぇ、4年間みっちり看護学を学んで、学士の資格もとって、先進医療に強い看護師を育てて…って、そんなにうまくいくものなのかしらん。
 実際のところ、看護師の資格が欲しい「だけ」なら3年の専門学校を卒業すればいいわけです。保健師助産師になりたい場合は、新たに1年間ほど学校に通わなくてはならないので、現状の4大よりは入学試験などで手間がかかる印象があります。
 余談ですが個人的な印象では、看護大学を目指す人は
1)看護師以外に保健師もしくは助産師の国家試験受験資格や学士の肩書きが欲しい(卒後の給料高いし)
2)なんとなく看護大学(卒後の給料高いし)
という感じに分けられるのかなと思います。自分は2)1)でした。

"学生の急増や医学の高度化に伴い、教育の質が保てない恐れがある"という理由

 看護大学を上記の専門家会議のようにカリキュラムを変更すれば、看護教育の質は保てるのでしょうか。
 私にはそう思えません。「学生が急増」すれば、その中には2)のような学生も確実におります。特に昨今の就職難な時代にあっては資格職の強さは計り知れませんので、仕事を続けられるかどうかは別として「就職できるかどうか」を職業選択において重要視する人も少なからずいると思います(ここではとりあえず、看護師の適正云々は抜きにします)。医学の高度化に関しても、病院等の現場ですらアップデートしきれていないような知識を、教員が学生に教えることができるのか疑問ですし、3年から4年にしたところで、実際に現場に出るタイミングが遅れるだけだという見方もできるのではないでしょうか。というわけで、私は"学生の急増や医学の高度化に伴い、教育の質が保てない恐れがある"から保健師の履修を除外して看護のみ4年、という意見には反対です。教育の質を保ちたいなら別の方法が…
ただし、私は看護4大制自体は検討する価値があるのではないかと考えています。

看護4大制

 看護師は技術職なんだから、看護学ってなんだよそんなもんいらないよ、解剖学とか生理学とか薬理学等の医学の基礎とその他専門科目を頭に叩き込んで、あとは臨床で学べよ、と言いたい所ですが、やはり現場での看護師としてのあり方などを「研究」するためには「学士」の肩書きが要ると思われます(大学院の位置づけとかはあまり詳しくないので間違っていたらすみません)。医学の高度化を看護教育の質の低下に直接結びつけるのはどうかと思いますが、高度化しているのは事実であってそれを「研究」して現場や学校まで提供する流れは必須でしょう。看護師国家試験を3年次に受験・資格を取得して、研修医ならぬ研修看護師といいますか、4年目をリアリティーショック軽減のための実習期間とすることで、看護師不足で問題となる離職率軽減に役立つかもしれません(3年で国家試験落ちても4年目で取れるような仕組みも作れそうだしNE!)。統計学や公衆衛生学といった、数字や集団の医療・健康を扱う学問にじっくり取り組むことを通して、医療に関する情報を正しく使えるようになるカリキュラムをつくるのもいいと思います(というか必須か)。短絡的ですが看護師や助産師が、安易にホメオパシーなどにハマることも少なくなるかもしれません(ここ重要)。

妄言まとめ

 とりあえず知識がない者の妄想を書いてみました。専門家だからこそ、お持ちの専門的な知識を「質の低下が…」というような理由ではなく、向上を見込むにはどうすればよいのかという視点で検討して頂きたいと願います。

 しかし、4大の検討をする前に、保健師の存在意義とか、既存の専門学校との教育差とか、準看護師の資格の扱いとか、もっと先に考えることがあるだろと思わなくもない…